学習記録(10/28-11/4)翻訳祭まとめ②セミナー

セミナーのまとめ

少し時間が経ってしまいましたが、翻訳祭セミナーについて振り返ってみたいと思います。

今回私は4つのセミナーを聴講しましたが、特許翻訳に関するセミナーがいちばん勉強になりました。プレゼンターは医薬分野を専門とする弁理士・特許翻訳者の沢井先生でしたが、医薬分野を専門としない私でも学ぶことは多かったです。

改めて、「法律系の知識」が欠如していることを認識しています。少しずつでも、特許翻訳に直接かかわるところだけでもこのギャップを埋めていかなければ…

法的側面から考える 特許翻訳(一色国際特許業務法)

PCT出願とパリルート出願の翻訳の違い

特許翻訳のジョブをしたことがある人なら、打診されるときにそれが「PCT出願」の明細書か、パリルート出願」の明細書かを教えてもらうと思います。

ちなみに私はパリルート出願の明細書は未経験。

PCT出願の明細書を翻訳するときには、「原文に忠実に」、原文の間違いさえも訳文に反映させることを翻訳会社から要求されます。(ただし原文の間違いのときはコメントが必須)

パリルート出願明細書の翻訳では間違いまで忠実に訳す必要はないようですが、これはなぜなのでしょうか? 

代表的な出願形式
(1)パリ・ルートによる直接出願
  第1国(基礎出願)→→→→→第2国(本出願)
                (優先権)
(1-1)外国語書面出願
第2国では、外国語で出願し、翻訳文を提出する。
(1-2)現地語での出願
基礎出願の翻訳文を作成し、それを基にして明細書を作成し、第2国特許庁に提出する。
提出するのは翻訳文ではないので、明細書作成の際に修正することも可能である。
 
(2)PCT出願
第1国(基礎出願)→→PCT出願→→複数の第2国(国内移行)
             (優先権)
パリ条約上の優先権主張出願をする場合、多数の国に対して同時に国際出願することができる(PCT出願)。その後、第1国の出願日から、原則的に30ヵ月以内に各国に国内移行する必要がある。第1国の言語でPCT出願されている場合、国内移行に際し、明細書の翻訳文を提出する必要がある


知財戦略を支える医薬特許翻訳実践
https://journal.jtf.jp/eventreport/id=605

プレゼンターの沢井先生の資料をネット上から拝借しました。

つまり、PCTの場合は和訳だと、第1国(基礎出願)後の第2国、つまり日本への国内移行のために行うものであり、完全に「翻訳」という位置づけ。だから勝手に内容を修正してはいけない。

パリルートの場合(特に1-2)は、基礎出願→その翻訳→翻訳を基にした明細書という流れで作られ、正確には「明細書」という位置づけ。原文のミスは修正可能。

なるほど、パリルート出願の明細書翻訳はハードルが高そうです。依頼が来ないワケだ。(ちまたの特許翻訳者さんは、ふつうにパリルートの依頼来るんですかね?ちょっとわかりません。)

新規事項と原文新規事項

セミナーの核心としては、「明細書の翻訳は、原文に記載された事項の範囲内にないことを翻訳文に追加してはいけない、また記載された事項を削ってもいけないということ。

俗にいう「等価」ってやつですね。セミナーを聴講して、特許翻訳で言う「等価」は、権利範囲に関わる分、ほかの翻訳よりもかなり厳密だなと感じています。

新規事項と原文新規事項(日本の場合)
新規事項

明細書は補正(修正)が認められている。その補正は、明細書に記載された事項の範囲内でなければならない。万が一、補正されて導入された事項が明細書の記載外のものであった場合、それを新規事項という。
原文新規事項
同様に、翻訳文は、原文に記載された事項の範囲内でなければならない。万が一、誤訳によって、外国語明細書の記載外のものが導入された場合、それを原文新規事項という。
上記には法的効果があり、新規事項の導入も原文新規事項の導入も、拒絶理由の対象となり、無効理由となる。

知財戦略を支える医薬特許翻訳実践
https://journal.jtf.jp/eventreport/id=605

上の引用文の内容によると、翻訳過程で「原文新規事項」が導入されてしまうと、優先権やその特許の有効性にも影響してしまうかもしれないとのこと。

正直、恐ろしや~って思いました。自分の翻訳でその特許の運命が決まってしまうかもしれないなんて、責任重大です。

では、原文新規事項の簡単な例を挙げてみましょう。

例えば、牛乳に関する特許があったとします。(実際に「パン食用牛乳」というのがありました。)

「本発明は、…な牛乳に関する。」という文を英訳します。

特許翻訳以外の翻訳で考えると、

日本語:「私は毎日、牛乳を飲みます。」

英語:「I drink milk everyday.」

なんて訳しそうですが、同じことを特許翻訳でやると原文新規事項になる可能性がでてきます。

日本語:「本発明は、…な牛乳に関する。」

英語:✖「The invention relates to milk ….」

なぜか。牛乳を正確に訳すとcow’s milkcow milkになるからです。

特許翻訳でない場面で「milkを飲んだ」というと牛乳だと考える人が圧倒的に多いと思います(山羊乳を飲むハイジや母乳を飲む赤ちゃんは置いといて)。

乳(milk)は牛乳(cow’s milk)の上位概念ですから、原文より範囲が広くなってしまいます。もちろん下位概念化してもいけません。

ここに挙げたのはセミナーでも話された簡単な例ですが、実際はそれほど簡単な話ではありません。特許判例などで、さらに勉強していくしかありません。

まとめ

今回のセミナーで学んだことは、特許翻訳とは「逐語訳vs意訳」や「読みやすさ」が重要なのではなく、「原文を過不足なく等価に訳し、特許の権利範囲に影響を及ぼさないこと」が重要だということです。

とはいえ正直、「そこは特許事務所や弁理士さんがチェックしてください~」と言いたくなるのが本音です。

ただ、「原文新規事項」という視点を持ちながら訳すというだけでも、リスクを減らせるのかなと思います。

何にせよ、さらに勉強して「法的観念」からもさらに特許翻訳を深めていかなければと危機意識が高まっています。

学習記録(10/28-11/4)

10月28日 8.25時間

  • webサイト翻訳(4・5件目下準備、3~5件目翻訳、3~5件目チェック)
  • 化学・質問と回答 化学反応機構_20191025_0、3285_AI翻訳に未来はあるか、3286_ブログの育て方
  • ブログ
  • 英文CV下調べ

10月29日 8時間

  • 1599_英語版CV作成時の注意点
  • webサイト翻訳(6~8件目下準備、6~8件目翻訳途中、6~7件目チェック)
  • 英文CV下調べ

10月30日 8.25時間

  • webサイト翻訳(9~10件目下準備、8途中~10件目翻訳、8~10件目チェック、これまでのFBを修正)

10月31日 4.25時間

  • 英文CV作成

11月1日 5.75時間

  • 英文CV作成
  • 特許翻訳ジョブ(準備①、Ekword分析、対訳準備、和文明細遺書準備、クレーム読み)

11月2日 6.25時間

  • 特許翻訳ジョブ(和文明細遺書読み①、スタイルガイドなど読み)
  • webサイト翻訳(1~2件目下準備、1~2件目途中翻訳)

11月3日 4時間

  • webサイト翻訳(3~4件目下準備、2~3件目途中翻訳)

11月4日 5.25時間

  • webサイト翻訳(5~6件目下準備、3~5件目途中翻訳、1~2件目チェック)
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